思考力

チョコレートだとしても

最近は、何かと効率性が優先され、時間を有効活用することを強く推奨されている。もちろん、有限の時間を大切にすることは、今に始まったことではなく、これからもずっと変わらない。ただ、ネットーサーフィンや、SNSに費やす時間がムダであるということが声高らかに叫ばれ、それが人間の本能を刺激し、時間という貴重なものをムシャムシャと喰い尽くしてしまう「キケンな存在」であるという主張も多々ある。しかしながら、少し観点を変えてみると、かつては時間をかけて行なっていた、知らないことを検索する手間や、取り逃がした情報を好きな時に好きなだけ手に入れられるわけだから、インターネットという魔法の世界に費やす時間に対して、目くじらを立てて批判するだけでは、事態は上手く前に進んでいかない。知らないワードを調べるのに、分厚い辞書をめくる面相な時間と重苦しい労力を省いて、Google先生に質問すれば、瞬時に答えが返ってくるわけだから、トータルの時間で言えば、かつてのムダな作業時間を短縮した訳だから、それと比較すれば、さほど時間の無駄ともいえないのかもしれない。へそ曲がりの私の屁理屈と言えば、そうなるのだが、一理あるのではなかろうか。

職業柄、自分より若い人たちを相手にするので、時と共に相手との年齢差が離れていくという悲しい事実の中、特に話題が噛み合わなくなることがツライ。ただ、そんな悩みを見事に解消してくれたのが、Google先生の支配下にいるYouTubeであり、私の世代のエンタメ番組や、今や名前すら知られていない番組の主題歌や歌手の歌などを話題にすると、授業が一気に盛り上がる。昭和の時代のヒット作は、不変のパワーがあり、高度成長で日本がモリモリとパワーアップしていたのだから、平成生まれの鬱屈とした世代にとっては刺激で溢れており、令和の時代に生きる彼ら彼女らにとって、昭和生まれの私の話題であっても、YouTubeを観て貰えば、十分ネタとして使える。しかも、今やリバイバルブームで、かつての番組の芸能人がYouTubeで返り咲いたりもしているので、私は時代を大きく先取りした預言者の扱いとなる。これは誇らしい。

では、話を「依存」の問題に戻す。どんなものにでも依存性はあり、仕事であっても、恋愛であっても、趣味嗜好品、思想においても全ては個人の好みが強く出てくるものであり、それを悪とするのは良くない。人によっては、チョコレートであっても強い依存性が出てしまう人だっている。その依存した対象から、際立った成果が生まれることだってあり、芸術や宗教、哲学などは、その際たるものと言える。ただ、ほとんどの人は、依存をしたところで、その対象に踊らされて溺れてしまい、最終的に得られるものが少ないという歴史上に考えると、やはり非効率な悲しい結末に終わっているので、やはり、ある程度の距離を置いていく方が無難だろう。

最近の私のお気に入りの夜の過ごし方は、青春時代に聴いた曲、特にカラオケで唄ったところで、誰も知らない場を白けさせてしまう曲を聴きながら、その歌に合わせ、私のスタイルである、指先の爪まで意識して表現する、タクトを握らない指揮で、曲を体現することだ。一戸建てなので、隣室には人はいないので、思いっきり自分の世界に入れる。その気持ちがさらに曲の流れを受け取る感度を上げ、YouTubeから流れ出るマニアックな曲で、コンサートが繰り広げられる。私が生まれる前のフォークソングから、私が男性へと目覚める前の曲、そして性が目覚めた頃から、一気に現代の流行曲まで。そして、その流れを一気に逆流させるなど。背中には、観衆がいて、自分の背中の筋肉の流れを魅せ、コーラスの右の角度と、左の角度からの音を聴き分けて膝から指先までしならせる。そして真正面から曲を切り裂いて、左のピアノの音を切ってフィニッシュとなる。最高の夜だ。

かつて、どっぷりと「依存」していた曲を体現することができるのだから、YouTubeに依存するということは、大変素晴らしい。少なくとも、私にとっては、どんどん依存して、身体が眠る前に自分の才能を錆びつかせて眠らせないようにエクスタシーを感じた方がいい。とはいえ、やはり依存しすぎるとカラダには良くはないようだ。依存性のあるものは、精神的な快楽を得られても、肉体的にダメージを与えることが多くあるのが現実。それを痛感したのが、まさに今朝の私の身体だった。

今朝、目が覚めると、強烈な寒気がして、腰と首とフクラハギが強い筋肉痛だった。昨日、東京に行った時にウィルスに感染したと思い込んで、ますます震えが止まらない。体温計は正常値だったのだが、とうとう感染したかと本気で思った。思い当たる節を考えあぐねると、昨日は明治神宮を突き抜けて、渋谷をウォーキングの後、歯医者でカラダに要らぬチカラを入れて虫歯の治療。夜は、時代の枠を取っ払ったオーケストラの指揮を、時間を忘れて汗だくになってやっていたのだから、筋肉痛と寒気がするのも無理はない。とりあえず、原因は解明されたので安心した。そして、今日は家賃の引き落とし日。銀行口座がスッカラカンだったので、急いで銀行に行って口座にお金を入れれば、シッカリと家賃が引かれた状態で残高が表示された。引き落とし日当日なら、滞納として扱われないことを知る。やっと現実が見えた。

-思考力