思考力

前にできた前を創る

 

やって良いことと、悪いことの区別というのは、とりあえず「法律」という基準に照らし合わせて考えると、境界線を決めやすい。飲酒運転は言うまでもなく違法。日本では、一夫多妻制は認められていないので、法律上は違反。たとえバイトであれ、就業規則に従わないで、店の商品を盗むのだって、もちろん罪を問われる。だから、本人のモラルの意識にかかわらず、やはり、法律の範囲を踏み外しているのであれば、それは悪いことだと断言できる。大麻などに関しては、その国によりけりということは言えるが、やはり国ごとの法律というルールを守らなければ「アウト」である。

ただ、自分の犯した反則行為や出来事に対して、「言い訳」や「言い逃れ」をすることはできるようで、アクセルとブレーキを踏み間違えて人を轢き殺しておきながら、今でも容疑を認めなかったり、不倫していながら、ただの遊び仲間だったと言い逃れることもできる。どんなにイケナイ事だと分かっていても、虚栄心というか「中二病」ような意識であろう、バイトテロなども終わりを見せることがない。轢き殺されてしまった人の遺族の気持ち、不倫をされてしまったことを知ってしまった人、従業員の意識の低さが露呈されてしまった店の責任者。

どのような悲惨なアクシデントであれ、やはり被害者が、今後の人生において、前を向いて生きていけるキッカケを見つけ出すことは、とても困難である。大きな事故につながらないように、普段から無法者の動きを察知しておかなければならない。とはいうものの、例えば、喫煙コーナーではない場所で、喫煙している人に注意をするのは、けっこう勇気が要る。相手の気質や性格がわからないし、あえてマナーを守らないような輩が、逆に因縁をつけてくることだってあるかもしれない。このように、法律という枠がない、本人の「マナー」を問われるようなケースは、本人の意識を変えてもらうか、「その日」が来るのを待つしかない。

成功者が転落する理由には、いろいろな要因があるものだが、やはり成功者自身が、自分の振る舞いや言動に注意を払っていなければ、いつの間にか周囲からの反感を買っていることに気づかぬまま、思いっきり転落の道を辿ることにもなる。今までのノーマルが、今後のアブノーマルになることもしばしばで、今まで善しとされていた習慣が、実は正反対であることもある。私が小学生の頃などは、日焼けすることが善しとされており、夏休み明けに、いかに肌を日光に晒し、肌を焼いたことを「コンテスト形式」で勝者を決め、表彰するイベントを、全校で開催していた。なんでも、夏の日焼けは、冬の風邪をひかぬ予防薬となるという根拠だった。紫外線の恐怖が叫ばれる以前の話だ。

今摂るべき薬であれ、数年後には「毒」となっているかもしれないし、あと50年くらいしたら、化学薬品を体内に摂取していたこと自体が「悪」と認識されているのかもしれない。最新研究で判明したことが、今までの常識を覆す。ただ、その覆された常識でさえ、結局、時間の経過と共に、いろいろな過程を経て、非常識となることも多い。いや、ほとんどの概念は、時間の経過と共に変化し、ニュースタンダードが確立されていくような仕組みになっているのだ。これは、科学技術の発達の速度が上がるほどに、避けられない事実である。

株であれ、ビットコインであれ、一夜にして大暴落が起こる可能性だってある。ただ、一昔前のように、パソコンの画面に張り付いて、1分単位で株価の値下がりや値上がりを観察していなければならないような時代でもなくなり、銀行に預金するより、お金を投資して、資産増やすという方法で預けるという手法が、常識になりつつある。もはや、銀行へ自分の金を置いておくなど、金持ちはやっていない。受験生のイメージだって、昔の昭和のバブル期とは随分異なり、瓶底眼鏡を掛けてアタマにハチマキを巻いてガリガリ受験勉強する時代でもなくなり、ホテルのラウンジで流れるリラックスジャズが流れるようなオシャレなカフェで、ゆったりと勉強することが、今のスタンダードでもある。

もちろん、変化することを頑なに拒んでも良い。ただし、そこに強いこだわりがあるのであればという「前提」が必要ではある。自分のこだわりもなく、ひたすらに自分が動くことが「面倒」だからと考えながら、変化することを恐れ、何もしないのであれば、それは単なる甘えに過ぎない。だから、積極的に行動を変え、新しい考え方を、積極的に取り入れていくということは、これからの社会の基準や規範を変えられるだけの力を得ようとすることと同じ努力をしていることにつながる。つまり、自分が最前線でネオスタンダードを創造する力を得ている証しでもあるのだ。

別に、「目立ったもの勝ち」と言いたいわけではない。地味な努力こそが、成功への近道であるという考え方は、私だって大いに賛成する。ただ、その努力という側面において、時代の変化を見据えて進むべきベクトルを、微調整することも同時に必要なことだと思っている。

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