思考力

先人に会釈

芸能人というのは、やはり「オーラ」が出ている。ただ、「ソレ」は、普段からテレビの画面などのスクリーンに映っている人が、直接、網膜に映ったから、少々の驚きが出るだけであり、見えないはずの「後光」がさしているというわけでもなさそうだ。ただ、芸能人というのは、やはり、何か特殊な才能がメディアに評価されているから番組に出演できるわけで、一般素人とは少しだけ目立つ要素があるということも事実。

もし、自分が知らない芸能人が、自分の目の前を歩いていたり、自分とすれ違ったりしたときに、その人から「オーラ」を感じられるだろうか。そう考えると、やはり答えは、“NO”。だから、先ほどの網膜に映った画像が、普段テレビで見ている画像と一致して、少しビックリしただけという結論は、あまり正しいとは言えないようだ。そんな有名人は、やはりテレビ局側の意図するような異才を放たなければならず、放映する前に「仕込み」や「ヤラセ」などで、自前の「オーラ」を、テレビ局のファンタジーの世界で、極力盛っていかなければならない。

かつて、一斉を風靡した「大食い芸人」であっても、もしかしたら、食事中に食べている量を、テレビ局側の意思で調整しているのかもしれないし、とても優秀で、ザクザクと人の矛盾点を指摘しているような芸能人であっても、かなりの脚色された台本があるのかもしれない。夢をブチ壊されるが如く、実際の芸能人のプライベートの姿が、あまりにも横柄で、イメージとかけ離れた実際の姿を知って、とても落胆してしまう人が多く出てしまうのも事実。かつてのブラウン管越しの映像は、そのような面において、芸能人は「架空の人物」と捉えていた方が良かったとも言える。

ただ、今はメディアが個人にスポットを当てる時代に変移し、中途半端な実力しか持たぬ芸人より、一般人のYouTuberの方が面白いし、そちらの方が強い影響力を持つようになった。「テレビオワコン」という定義も、もはや当たり前。視聴中に知りたい情報があって、今が集中すべきときだと思いきや、商品コマーシャルが入ってしまえば、そのまま視る気が失せてしまう。ライブの放送ならば、「早送り」ができるわけでもないので、放送局が視聴者の意思を全て握っていた。

人を惹きつけるためには、一体、何が必要なのだろうか。かつてのテレビ番組は、ブラウン管の中の芸能人が着ている服や商品が、そのまま視聴者の流行になっていた。だから、その流れを作り出すための努力というのは、とてもシンプルであり、いかにメディアの情報を早く仕入れて、それを自分の知識だということを披露していれば良かった。世間一般が、同じ媒体で同じ情報を仕入れているのであれば、やはり「早い者勝ち」であり、テレビや新聞、雑誌などのメディアの情報に、少しだけスパイスの効いた自分なりのアイディアを盛り込めば、一躍芸能人並みの人気を誇れるような時代だった。

今は、人に好かれる為、もしくは人を惹きつける為に、メディアに毒されたセリフを周囲に吐いているだけでは、それは単に「余計な情報」としかならない。なぜなら、どこかの誰かが放った面白い話など、瞬く間に炎上するか、誰もが知っている情報として認知されている。余計な情報をカットした状態で、自分に好感を持ってもらえるような情報にするためには、やはり「ブルーオーシャン」で受け取った知識や体験をもとに、ブルーオーシャンに行くための情報を発信し、ブルーオーシャンで活かせるコツを発信しなければならない。そして、そのような情報は、今の時代には欠かせない貴重な財産を創り出すのだ。

昨日、千葉の海の中で、初めて「真木蔵人」氏を見かけた。私がサーフィンを始めた頃、私の周りに、彼のスタイルを真似る人が多かった。私は、多くの友人が彼の真似をしていることそのものを「真似る」ことで、彼に対する憧れが強くなるという、変な辿りつき方をした。古着の着こなし方、90年代に皆が、右へ習えのポテトチップのように尖った板を買い求める中、彼は、今の主流となっている「丸みを帯びた板」に乗っていた。まさに、彼の後ろに流行が続いているようであった。

実は、私の板は、「ニーボード」という絶滅危惧種の板であり、足ヒレをつけて膝立ちで波に乗るスタイル。東京にいた頃、体力の限界を感じつつ、彼が雑誌の表紙で乗っていたスタイルが、まさにその「ニースタイル」だった。今の板は、彼と同じシェイパーのボード。海で足ヒレを履いて、膝立ちで波に乗っていれば、目立たぬはずもない。何回か目が合い、軽く会釈をした時に、向こうも頭をペコっとした「気がした」。私の見間違いなのかもしれないが、彼の目に私の姿が映っていたことは確かだ。

そして、やはり彼のライディングは、一線を超えた逸品であった。ロングボード世界選手権5位を獲得したことのある彼のライディングに、嘘偽りはなく、長い板を、まるで短い板の如くビシバシ波に当て込んでいく。リラックスしているというのに、不思議と彼のもとに波が吸い寄せられていく。彼が岸に着くと、波はピタリと収まり、彼が沖へ出ると、再び波がブレイクし始める。一つの曲を作り上げる奏者が、自分の色を出しつつも、全体の調和を意識して曲が組み立てられる“Jazz”のように、波と融合していた。

相変わらず、不眠症は続いている。夜中になると、眠れなくなるほど腹が減って、コンビニまで「毒」を買いに行って、むさぼり喰う。夜の車のエンジン音は、高齢者が住む近所では、かなり迷惑甚だしい。こんな日々を過ごしている中であっても、波乗りという「抗うつ剤」を服用していれば、とにかくハッピーデーが続く。最近のお気に入りの言葉、「心配事の8割は起こらない。残りの16%は事前に対処できる」。この合言葉で、このままハッピーが続いていけば良い。

 

 

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