思考力

強めのパンチを牽制する

昨日、週一回だけ勤務している塾へいったときの出来事。いうもフレンドリーに接してくれるマルチタスクができる優秀な講師に、「〇〇先生は、正社員なのですか?」と訊くと、その講師はマスクの下で顔がキリッとなっているような雰囲気で、「そんなに知りたいですか?私は、そのような立場ではないのでお答えしたくありません」ときっぱり断られてしまったのだ。いつも親しみやすい雰囲気の人が、あえて強めの牽制をしてきたので、ハッとさせられた。

誘導尋問。私は、気が小さいので、これに乗せられてしまうことがある。10年以上前の出来事。とある塾で、大手の予備校2つと、私の勤めている塾、合わせて3校舎を兼任していた講師がいた。この輩は、すぐに私が物怖じしてしまう事を見抜き、私が言いたくないような事を、根掘り葉掘り訊いてきて、私が何も話ができなくなっているところを見て内心では、喜んでいるような感じの性格の悪さ。趣味の将棋のスキルは非常に高いようで、人と人を戦わせたり、相手が動揺するところへ話のコマを進めることに関しても、とてもレベルが高かった。

仮に、前者で紹介した講師と、後者の悪い気質の講師が同じ職場で働かなければならなくなったら、どうなるだろうか。もちろん、前者の方が素晴らしい人格者であることは言うまでもないが、後者の性格の悪さは尋常ではない。ただ、このような事をダラダラと考えること自体、私の考え方が未熟な事を示している。仮の話であれ、頭の悪いお粗末な考えで、架空の事柄を予想してイメージしても仕方がない。これでは、相撲やプロレスや競馬の予想屋だ。

では、次のように考えるのは質の高い考察につながる。後者のタチの悪い質問に対して、自分が、いかにして前者の講師のような毅然とした態度を貫けるかのシミュレーション。それを考える。かつてから現在に至るまでの間の私は、相手の質問の全てに答えなければならないと思い込んでいた。それなのに、相手が自分の触れられたくない部分や、入って欲しくはない心のエリアに侵入しても、おちゃらけなければならないと思い込んでいた。例えるなら、車の運転をする際に、クラクションを鳴らせず、大きな事故が起こりかけたりすれば、完全に相手が悪くても謝ってしまうような状態であった。

昨日の優秀な講師は、心のバリアをしっかりとキープできる人だった。だからこそ、その塾の柱として活躍できるのだと思う。そして、私も、これからは、余計なお世話な話をすると、その講師の機嫌が悪くなると知り、もうその講師の心の領域に深く踏み込まないと、心の中で決心した。そして、自分の心の領域でさえ侵入されないよう他者と接する事を、毎回のことながら決心している。ただ、根本的に気が小さいので、それをキープすることが、再びできなくなってしまうのかもしれない。でも、リトライすることは、何度でもできると思う。

今後は、逆に、私がコンタクトを意図的に放棄しない限り、その講師とは適度な距離で接していくことができると思う。ここでも、一度衝突したら、完全に関係を絶ってしまうようなことはせず、むしろ仲良くなれたキッカケを掴んだと言えるような気持ちで、前向きな関係を作り上げていこうと思うのだ。犬は、甘噛みをして噛む強さを理解して成長するように、人とのコミュニケーションで大事なことは、実戦で何度でもトライすることができるのだ。

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