思考力

永く交わる味方

絶対に自分の味方になってくれる存在は、何だろうか。家族、友人、医者、学校の先生。例え、これらが「全能の神」のような気持ちで自分を守ってくれているとしても、その存在する人たちとは、いつかは別れなければならないのが真実であり、どんな場合であっても、時間の流れの中で変化していく環境の中で、人との繋がりに「絶対」はあり得ない。では、人間の中に完全な味方を作り出せないのであれば、積極的に味方につけるべきは何だろうか。これを考えた時に、道徳的観点で言えば「自分」だ。自分は、自分を決して裏切らない。だから、多くの人は「自分を大切にしなしさい」とか「しっかりと自分を見つめなさい」と言うのだろう。私も授業中、よく自分の生徒たちに言い続けていたものだ。

哲学的観点でも、自分は自分から決して逃れることができないというのは、真理。さらに、「時間は常に流れている」ということも、真理として挙げられる。だから、常に人生を支えてくれる味方を探すという命題に対して、「実在する自分」と「絶えず進んでいる時間」を組み合わせることによって、時間を味方にするという考え方は、完璧な論理が成立するのであり、ぐるりと環状をなす。では、この考え方に基づいて、時間を味方にすることで生み出される収益を考えてみよう。

生産性を上げる為に時間を有効活用するには、時間そのものを多くとる為に、効率よく事柄を処理するスピードが求められる。だから、時短をすることによって、短期間で出来上がる仕事の割合が増え、量としての成果を十分に得ることができる。ただ、味方となってくれる時間を短期的な成果を得るためだけの相棒と捉えると、マイナスのリターンとして帰ってくることも多い。短期間で資産を増やす為に、知識が乏しい状態のまま、ギャンブルが如く「株・証券」や「仮想通貨」に手を出せば、手痛いしっぺ返しを受けたとしても、味方として淡々と流れている相方の「時間」に文句を言えない。あくまでも味方というのは、丸投げ状態で依存するのではなく、しっかりと自分が困らないように支えてくれる存在なのだ。

逆に、長期的に時間を味方につけることは、かなりの得策と言える。先ほどの「投資」という観点から考えると、アインシュタインも絶賛する「複利効果」を得る為には、長いスパンで物事を考える必要がある。「積み立て投資」が、まさにその代表格だ。最初に生み出される利益が微々たるものであっても、10年単位で考えれば、年利が下がらない限り、絶対に元本割れすることなく、元金が右肩上がりに膨れ上がる。じっと耐える。ある時、フッと積み立てをやめたくなる。この状況の渦中に、時短の甘い言葉を巧みに利用する者が出現しても忍びなく耐える。バビロンの大富豪の教え「外敵から資産を守る」に従順に沿って耐える。味方にすべきは「時間」であり、詐欺師ではない。

このような長期的に時間を味方につけるという考え方を守っていると、絶対に関係を切ることができない「自分」という代用の効かない存在の大切さを知ることができる。短期的に、その時々の自分の状況がけを見て、絶望の渦中に自分を追い込んだところで得はない。時間が流れていくという真理を消すことは不可であり、また、自分という存在は、時間という流れの中で必ず消えてしまうというのも事実。それならば、絶望不可避で困難な局面をむかえてしまったのであれば、流れゆく時間という親友を味方にし、必要以上に自分を傷つけることはしないことだ。

今までの人生経験で、絶望的な状況を多く乗り越えてきた人ほど、このことをよく理解できるはず。どうにもならなくとも、もがき苦しみ、試行錯誤して生きてきた。時間が流れているという事実と、今、この時点で呼吸をしており、この記事を読んでいる。これを否定できまい。人生経験を積むほどに、人間は強くなる。人間は、現時点で解決できない障壁に直面したからといって、煙のように消えていく存在ではない。少なくとも時間の流れは進んでいく。それを理解できれば、「時間が解決する」という言葉の真意を知ることができる。今まで共に生きてきた、これ以上ない味方である「時間」の中で乗り越えられた経験をベースにして、今、直面している壁を、喜びを持って受け入れることができるのだ。

 

-思考力