思考力

履歴を温存する

強い過去のトラウマ。調子が悪い時には、目が覚めてからずっと脳裏をよぎるどころか、眠るまで頭を支配してしまうこともある。ここまで強いマイナス要素を常に抱えているとなると、やはり時間がトラウマを消していくなどということに期待するのは難しい。確かに、毎日吐き出してしまうように悩んでいた中学時代のイジメや、華やかであるはずの大学の1年間呑み込んでしまったような厳しいアクシデントであれ、時間が経過した今となっては、もう過去は過去だと割り切れるようになっている。だから、今苦しんでいる負の出来事に対しての感情というものにも、いつか決別できるのだろう。これは、自分を慰めるためというのを引っこ抜いて、確かなことだと思っている。

YouTubeのオススメ動画には、広島長崎の原爆を体験した人たちの悲惨な現実や、今もなお引きずっている苦しみの実体験の話などが表示されている。原爆が投下されたあと、今の平和な状態を再構築できた日本の強い回復力を考えれば、私の過去の追憶も、どこかで切り離さなければ、前へ進めないことがわかる。私の過去のトラウマが小さなものだということはないのだけれど、やはり強い過去のトラウマに苦しんでいる人は確かに存在しているわけだし、その出来事に対して一生引きずらなければならないという苦境は、多かれ少なかれ、どんな人にだって関与することなのだ。

今、日本列島に大きな台風が接近している。その事実に対し、この数日の間に大きな痛手を食らってしまう人が出てきてしまうのも避けられないはずだ。だから、得体の知れない現象に対しては、人間は常にアンテナを貼っておかなければならない。その被害を最小限に食い止めるためには、やはり今までの経験を追憶することも大切であるし、今まで同じような苦しみを経験してきた誰かの体験談と、その克服法を学ぶことも大切なのだ。ここでもやはり、誰かの過去の経験を自分と切り離して考えるというのが、とても愚かなことなのだということがわかる。

台風が近づき、高温が続いているとき特有のヌメっとした空気が、体を覆うように感じられる。こんな感触を過去のどこかで経験しているから、その時の追憶から、これから起こりうる現象に対して予知することだってできる。もちろん、直下型地震のような第六感が極限状態で発達している人以外は予測できないようなことだってあるし、そんな未知なる現象をあたかも予知できていると言い張って不安を煽るような人だっている。どこまで本当なのかというのは分からないし、どこからどこまでを信じるのかはその人次第ではあるが、起こってしまったことを過去のデータの履歴に残しておくことは、とても大切なことである。そうすることで、やはり経験を積んだ人の人間の「厚み」というのが形成されていくのだと思っている。

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