思考力

クラッチを切るタイミング

いつもは、カットだけ。しかも、バリカンでの散髪。料金は、2000円。1000円カットの店に比べれば、値段としては高いのだが、床屋の店主の心意気で、特例的にカットだけしてもらっている。嬉しいことに、ここの店主は、私の千葉での生活の流れを知っていてくれるので、もはや友達と呼べる人がいなくなっている私には、現状を知ってもらうののには、好都合。だから、ここの床屋に行くのは、毎回毎回、とても楽しいものだ。

そんな心意気の温かい店主の店なので、千葉外房の床屋であっても、しっかり予約を取らなければ受付してもらえず、今日も都合の良い時間に予約を取れなかった。最寄り駅前で、色々と大事な手続きをしていたら、予定より大幅に時間がかかってしまい、少しの望みをかけて床屋の前を通ると、店のドアにいつもぶら下げられている、受付順番待ちの札が無かった。今回は、なんともラッキーなタイミングで予約外のカットをしてもらえることとなった。

店主にお願いして、左のもみあげから生えている「福毛」を切らずにしていたのだが、色々と自分の周りを整理できつつある今、この見事に真っ白い白髪の福毛を切断することにした。正確に切断してもらうため、今回は、顔剃りもお願いし、フルケアでのカットとなる。この半年以上、苦楽を共にした長い福毛をカットしたら、この先、どのような事が起こるのだろう。福毛は切らずにキープしておく方がいいと言われているが、左もみあげだけ、3本垂れ下がった白髪は何ともみすぼらしく、実際に対話している相手の視線が、明らかに私のもみあげに行っていることが分かる事がある。

顔剃り中は、とても心地が良く、ウトウトと眠りそうになり、もし毎晩寝る前に顔剃りをしてもらえたら、私の悩みの堂々ナンバーワンである「不眠症」を解消してもらえるのかもしれない。今まで生えていた8センチほどの白髪が無くなり、何やら慣れない自分の顔左側面に、私の左手も寂しそうだ。昨日購入した財布も、私の後ろポケットに収まるときに、まだまだ慣れない状態なので、ポケットから落下しないか少し心配だ。何にしても、今まで存在していたものが無くなったり、それが別のものに置き換わると、自分の中では不自然な気持ちに苛まれてしまい、従来の状態の方が良かったのかもしれないと感じる事がある。ただ、新しい状態や状況に進まなければ、自分を変化させることもまた難しい事であるとも言えよう。

変化することを恐れ、今までの方法にしがみついていては、その先の進歩が遅くなることにつながるケースが多い。新しい方法で試みたら、悲惨なアクシデントに巻き込まれでもしたら、自分を責めてしまうかもしれない。だから、人間は変化することを恐れるし、危険がある可能性があるのなら、そこを回避するためにも今の体勢を変えずに守りに入る。それで成長することだってあるのだから、あながち新しい術に乗り換え続けることだけがいい進み方だとは言い切れない。

車のエンジンには、ギアという変速機が付いていて、その都度その都度の路面に合わせ、臨機応変にシフトチェンジしていかなければならない。私は、今、変化を求めるために、もっと明るい人生を得るために、ローギアからトップにギアを上げることを目指している。今までの足枷とエンジンブレーキを切り離して、スピードを上げるべき時期に突入しているのだと考えている。考え方や生き方を変化させるというのは難しいが、少なくとも人生という道の上で、自分が進むペースやスピードを調整することは、自己責任の上で積極的に行うべきだと思っている。

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