思考力

力を温存する

仮に、完全にバレないという状態で、人殺し屋が存在するとすれば、それを利用するだろうか。なかなか興味深い発想である。おそらく、私くらいの年齢になると、大きな障害や危機を乗り越えてきたわけだから、許せない人の一人や二人は存在するはずである。その人たちが、悶え苦しみながら死んでいくという光景を、完全犯罪として実現できたとしたら、それで心の虫唾は、解消されるのだろうか。

仏教では、「因果応報」という言葉や、「因縁」という言葉があるように、悪い行いをした者には、必ず悪いことがブーメランの如く却ってくるのである。ただ、それはただの妄想で、実際には、そんなブーメランは無く、危害を与えた者の人生が穏やかなものであれば、被害を受けた当事者の憎しみは、倍増するばかりであろう。

10年前には考えられないほど、スマホの影響で、インターネットの世界は、私たちの生活に密接な関わりをもつようになった。電車に乗れば、ここぞとばかりにスマホの画面を指でなぞり始め、電車のホームでは、歩きながらのスマホを注意喚起するアナウンスが流れている。10年前に刑務所に入って、服役を終えた囚人から見たら、この風景は異常な絵図に感じるであろう。

犯罪という観点から、許せない人に対する恨みを考えてみると、犯罪の多くは、金が絡んでくる。オレオレ詐欺や、詐欺商法、ワンクリック詐欺など、いつの時代も、見ず知らずの人から金をむしり取るために詐欺が横行し、その被害者は、そのような輩に対して恨みを抱くこともある。そんな目に見えぬ輩に対しての恨みというのは、なかなか厄介で、怒りの矛先すらどこへ向けて良いのか分からない。そんな人に対して、感情的になるというのは、なかなか滑稽なこととなってしまう。

やはり、日常生活において、シッカリとした防御の姿勢をもつこと。言い方を変えれば、「知は力なり」という気構えを持ちながら生活することだ。そうすれば、少なくとも、金の亡者から身を守ることはできる。また、自分の周囲にいる人が、本当に自分にとって必要な人なのかを判断することだってできる。まずは、心の門戸を、少しだけキツくしておくことも大切なことではないだろうか。

-思考力