思考力

便利屋以上神社以下

 

自分の考えを主張するときに「根拠」がなければ、ただのワガママにしかならない。デパートのオモチャ売り場でワンワン涙を流しながら「おもちゃ買ってオモチャ買って玩具買って」と叫んでいるだけでのオコチャマになりたくなければ、しっかりと自分の言いたいことを論拠で支えてあげなけければならないのだ。「私が、オモチャを要求する理由は、脳の発育過程で必要な道具として、有意義に活用したいからである」。これでオモチャを買ってもらえるかといえば、なかなかそうとも言えない。「そんなことを言うだけの子供がいるから」などと言う、お寒いギャグにしたいわけではない。。

ここで、決定的に欠けているのは「データ」である。どんなにもっともらしい論拠であろうと、そこに客観的な数字や、過去の明確な事例などの具体性のある事実がなければ、その主張の説得力は、非常に軽薄な状態に陥る。「脳に刺激を与えることは、幼少期には非常に大切であり、そのためには手を使うことが効果的だということが、科学的根拠と共に判明している。【手は第二の脳】と呼ばれることもあり、玩具を使用することにより、指先の動きから脳の発育が活性化されるというデータあるということからも、私の現在の主張は、脳科学的に十分に確証される。故に、時間的効率を考慮すると、やはり現時点で玩具の購入には、十分な妥当性があるのではないか」。ここまで主張できれば、反論の余地はかなり狭くなる。

 

今の論理展開の構成は『三角ロジック』という雛形に基づいた主張だ。「主張とデータと論拠」の3点を詰めていくことで、自分の思考回路が明晰な状態になり、無駄を省いた自分の主張が、確実に他者へ伝えられる有効な仕組みを作ることができる。詳しくは、思考力養成予備校のサイトのYouTube動画で解説しているので、そちらをご覧になっていただきたい。

そろそろ、本題に入ろう。日々利用しているコンビニエンスストアと歯科医院の数を比較したことはあるだろうか。正確なデータに基づくと、驚くべきことに、歯科医院の数が多いのだ。さらに、歯科医院の数と神社の数を比較すると、これまた驚くべきことに、なんと神社の数の方が多いのだ。このデータに、どうして多くの人が驚くのかといえば、ひとつに、実生活で利用する頻度の差とも言えよう。コンビニを利用する回数と歯科医院に足を運ぶ回数は、圧倒的に前者の方が多い。さらには、神社にお参りに行くという神聖な儀式の回数は、恋の成就や厄除けなどの自分の願いと救いを求めるときに行く程度。足を運ぶ機会がそれほどないような場所なのに、いつでもオープンして、毎日当たり前のように目にするコンビニの数より多いなんて信じられないからだと思う。

このような日常のありふれたものの中に、驚きのデータが見つかり、それをもとに考察を進めていくと、なかなか面白い発見が出てくる。このようなアイディアの拡げ方をテーマに記事を書くこともしたいのだが、今回の記事で考えたいことは、上記の3つの中で2番目に数の多い「歯科医院」に関してにしよう。コンビニより数の多い歯科医院から、腕の立つ歯医者に出会うというのは、とても困難なことと言える。そもそも、初診では顎のレントゲン撮影から始まり、問診に加えて、歯と歯茎の検査など。とても多くの手間暇がかかる。診察料だって、決して安いものではない。そのような時間的・経済的ロスを防ぐためにも、歯医者選びは入念に、慎重に、また確実にしなければならない。

大学を入学して卒業するまでは、通常の学部であれば4年間だが、「医学部」「薬学部」、そしてなにより「歯学部」ともにそれぞれ6年間だ。身体に関わる業務は、そのまま命を左右する訳だから、これらの学部でいい加減な状態で卒業されては困る。そして、今回のキーワードである「歯医者」は、他の2つと違い、日々の緻密な作業が業務の中で常に必要である。だから、学力だけではなく、絶妙な手先の器用さと、強い忍耐力も要求される。これは、生まれつきの才能も関与してくるわけで、細かな作業が好きで好きで、「おもちゃ買って!おもちゃ買って!将来、コンビニの数より多い歯科医院の良い歯医者になるために、細かなプラモデルが欲しいんだ!」くらい言えるほどの幼少期を過ごせた人材しか、真に良いデンタリストにはなれないはずだ。

このような超優秀な歯医者に巡り会うためには、悪い歯医者に出会ってしまったら、とっとと見切りをつけて、次を捜す以外ない。私が千葉外房に引っ越すにあたり、結構な不安要素であった、生まれ育った東京の地元の歯医者との別れ。引越先で同等のスキルのある歯医者をみつけることは、なかなか困難だと覚悟はしていたのだが、現状は、やはりヒドイ状況だった。

インターネットの広告のズラリと並んだ歯科医院の中で、やはりクチコミNo.1なら大きく外すことはなかろうと勇んで足を運んだ。まず、母の歯の検査と入れ歯の調整からスタート。ショッピングモール内に位置するピカピカの建物。エステサロンのような受付のオネーちゃんは、満面の笑みで迎え入れてくれる。キッズルーム完備。忙しいママさんにも優しい待合室。バリアフリーの床は、シルバーカートを使わないと進めない母には嬉しい設計。診察室にはハワイアンミュージックが流れ、ズラリと奥へ続いている数多くの診察台には、個別のモニターがあり、ハワイのリゾート映像が気持ち良い雰囲気で流れている。

まず、院長らしい男性歯科医が丁寧な問診と診察。手際良く診療が終わる。さすがクチコミナンバーワン。それでは、次回の予約を取ろうとしたら、3週間後となった。人気の歯科医院。さぞかし良質な治療をして、患者からの信頼も厚いのだろう。ただ、初診の予約は3日ほどでとれたので、なんとなく悪い予感もした。

その後の診察では、最初の歯医者が出てくる様子がない。新しい入れ歯の型を取り、それを作成するためには、けっこうな時間がかかるということで、予約がかなり先になるという。そして、次の予約でも、入れ歯はできていない。一体、いつになるのだろうか。入れ歯の型は、2回取る必要があると聞いていたのだが、3回目でも型を取ると言っている。もちろん、最初に出てきた男の歯医者は一度だけ診察しただけで、入れ替わり立ち替わり診察する人が変わる。歯医者なのか歯科衛生士なのか分からない。「いつ入れ歯ができあがるのですか?もう3回目ですよ」と言うと、満面の笑みと共に、奥から入れ歯を持ってきた。

ここから、一気にスイッチON!怒りのやる気スイッチON!ハワイアンミュージックのリズムを打ち壊す怒声が響きわたる。強制的に引っ張り出した初診の医者に、容赦無く徹底的に雷を落とす。これ以上具体的に書くのは気の毒なので書かないが、少なくともインターネットのクチコミなどアテにして歯医者を選んではいけない。コンビニの弁当を選んでいるわけではないのだ。

次に向かうは、信頼できる人からの情報しかない。勤務先の社員が同じ市内に住んでいたこともあり、その社員の情報を元に歯医者を選ぶ。候補となった歯医者が、3択になった。あとは、インスピレーション。選んだ歯医者は、その社員が幼少期に通っていた歯医者だった。ここに賭けるしかない。今度は、母と私の2人で診察をしてもらうことで、時間効率と歯医者の腕前の確認を、自ら体当たりでする。

物腰の柔らかい歯医者であったが少々頼りない感じがありつつも、リーダー格の歯科衛生士が素晴らしい動きをしているので、とりあえず問題なさそうだ。母も、不満はないと言う。親子そろって定期的に検診に行っており、受付の歯科衛生士から親孝行の賞賛を受ける。その後、母はターミナルケアの病院へ入院となったので、私だけが定期検診となった。

いつも通りの定期検診1ヶ月ほどのこと。マックのハンバーガーをムシャムシャ食べていたところで「ガリッ」という音と共に、詰め物が取れた。すぐに電話をすると、その詰め物を持って、数日後にくるように言われた。かなり融通を効かせて予約を入れてくれた。なんて良心的な歯科医院なんだ。

早速、歯の詰め物を渡す………

これ以上、書いてもいいと言えばいいのかもしれないが、その歯医者の人生を台無しにする程の一撃を喰らわせてしまったので、やはり控えようと思う。

歯の資産価値は、一本100万円以上と言われている。そもそも、徐々に歯が弱くなって、徐々に美味しいものを食べられなくなったら、どんなに資産があったとしても全く嬉しくない。歯とお金を比較すると、多少の貧乏生活になっても、たまには美味しいものを食べるだけの歯が大切だ。だから、歯医者は絶対に妥協せずに選ばなければいけない。少なくとも私は、そう信じてやまない。

このブログは、20年以上お世話になった東京の歯医者に行く時間に書いている。やはり、虫歯が2本。歯茎も緩んでいた。そして、一本の虫歯の方は、あと2、3ヶ月で痛みが出るところだったそうだ。一生ケアする歯の治療と検査。往復5時間など、短い短い。フリーランスでネットを使う仕事ならば、こうやって電車に揺られながらできる。読者の方々も、よくよく考えてもらいたい。歯は、消化器官の入り口。ここが汚れていたら、どんなに消化器官をキレイにしようとしたところで、サイドブレーキをかけてアクセル全開にしているようなものなのだ。

そんなこんなで、往復5時間かけて受診する歯医者のオススメで「デンタルフロス」の存在を知る。最初は、歯茎から出血しつつ、指は逆にウッケツして紫色になっていたが、今では手際良くゴシゴシしている。このブログを書き続けることで「継続」の大切さを知っている。そして、歯の大切さも知っている私は、スケボーで酷く捻挫した手首を使って、叫び声をあげて顔を歪ませてでも、デンタルフロス続行中。人間は、身体的恐怖を感じると「継続」するチカラが大きくアップするようだ。あと半年後まで、改めて歯のケアを怠らないと肝に銘じた。

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