思考力

綺麗な穴を一つ掘る

「人を呪わば穴二つ」なんていう言葉もあるくらいだから、自分が千葉に移住して入社してしまったブラック会社での2年間のパワハラやモラハラに、退職後の3年間もずっとトラウマを抱えたまま我慢しているのが得策だと思っていた。まさか、駅の路地裏の片隅で、バッタリと私に重圧をかけて来た後者の副校長と鉢合わせになるなんてことも、全く想像もしてはいなかった。しかしながら、私の3年以上経過した怨霊が、心の底からメラメラと湧き上がってきて、それをスルーできるほどの心の器はなかった。その会社の某駅の副校長に怨説教をするためには。これを逃す手はない。

正直、一瞬迷った。ただ、それ以上に、自分が長い間トラウマと戦っているということくらいは、知ってもらうしかない。ただ、こちらのトラウマを相手が知るも何も、相手は「父の関係でいくところがある」などと言ってい足を止める気もない。それに、相手の父親のことなどそ知ったこっちゃない。こっちは、他界した愛すべき母に、美味しい物や贅沢な時間をとらせてあげられなかったのだ。

ますますイライラが募る。すると、父親の見舞い云々カンヌン言っていたはずの副校長だったのだが、路地裏の小さな古ぼけた床屋に入っていってしまった。「そもそも、私はココに用事があるんだ」だと言っていた。父の見舞いで急いでいるというのは、何だったのだろう。きっと殴られるかもしれないという恐怖で、瞬時に思いついたことが、床屋に逃げることだったのだ。その時点で、喫茶店でも焼肉屋でも風俗店でも、全ての店は、彼の逃げ場となっていたはずだ。

床屋の前でしゃがみながら待つ。店の前に自転車だけ置いて20メートルくらいのところから見物する。自転車の向きを変えて睨んでみる。ただ、このような幼稚な脅しというのは、私が「爆躁状態」の時に、とある酔っぱらい二人を土下座させたことを思い出したので、ここまでプレッシャーをかけられたのであるから、上出来である。早々と引き揚げた。彼も、ここら辺を歩くときは、相当な覚悟を必要とするであろう。少なくとも、心の中に恐怖の気持ちくらい持っていただかないと困る。私の受けた消えない心の傷の痛みを、チクリとでも感じ続けてもらうのだ。

そのあとは、カラオケに行って唄って、変なストレスを地味に溜め込まないように謳った。謳っている間は、午前中に何を起こっていたのかを忘れるくらいだった。心が身動きをできずにズタボロになっているのであれば、体で感じる心地よさにとろけていけば良い。人を呪わば穴二つ。午前中は、呪いの相手の墓穴を掘った。しかしながら、眠剤を飲んで寝る前に、思いっきり転倒してしまい、賃貸の穴に傷を作ってしまった。やはり、器用に穴を一つだけ掘るというのは、難しいと言えることを知った昨日だった。

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