思考力

人魚姫に語る

浅い眠りの時に、玄関のチャイムが鳴った。一番心地いいときの最悪の目覚まし。大きな声で返事をして起き上がろうとしているのに、チャイムが鳴り止まない。何度、返答してもダメ。なんとか玄関を開けたら、ふるさと納税の返礼品の「いくら」だった。昨年末に、世間様同様、しっかりと勉強したふるさと納税の、駆け込み寄付の返礼品が、忘れた頃に却ってきているような状態。改悪されたとはいえ、仕組みを理解していれば、やらない手はない制度に、マネーリテラシーを身につけている人たちが、多く利用している。

では、年明けに起こってしまった惨事に、被災しなかった地域に住む人ができることとして、被災地へのふるさと納税が挙げられていた。これは、とてもいい方法だ。まさに、自分の住む自治体へ収める税金を、被災地へ寄付するわけだから、いい意味で自分の住む地域を巻き込んだ義援金の代わりとなる。この案を考え始めた人というのは、本当にお金に対する知識があり、そのような人だからこそ、賢いお金の使い道を理解しているのだと思う。

昨日、海辺の駐車場でスケボーを蹴っていると、小さな車で波乗りに来ていた女性がいた。早々と支度をして、夕方から日が暮れる寸前まで波乗りをしていた。若い女性が、一人で東京ナンバーの車で波乗りに来ているのだから、本当にサーフィンが好きなのだと思う。しかも、板はかなり上級者用の物を使っていて、沖に出る時間も短かった。テクニック的にはまだまだだといえ、このような寒い海に突っ込めるというのは、とてもリスペクトしたいと思った。

本当に下心なく、その女性と話をしようと思って、駐車場で声をかけてしまった。中年男が話しかけてきて、さぞ驚かせてしまったのだろう。改めて見ると、すごく若い女の子だった。「スケボーに興味があるか」「これから少し時間をもらえないか」とか、本当の本当に純粋な気持ちで誘ってみた。これから一人で帰るとはいえ、「用事があります」と言われて断られてしまったのだけれども、慣れた手つきで冬のサーフボード とウェットスーツ を脱ぐという「修行」のような後片付けをさっさと終わらせていた。

年甲斐もなく「ナンパ」をしてしまったのだけれども、このような刺激も人生には必要なものだ。若い頃から、知らない人に声をかけるということは、とても苦手な行為であって、今回も、帰路に着く車の中では、心臓がバクバクしていた。それでも、家に着く頃には、そんな緊張もすっかり消えていて、こんなに刺激の強い出来事を、あっさりと忘れられるのであれば、心に染み込んで、尚且つ一生消えない傷跡を残した「ブラック企業トラウマ」も、消え去ってくれないかと思ってしまう。

空気が冷えている。冬の空気だ。ピリリとしている。今、正午を周り、空気を入れ換えてみると、部屋の中に清らかな血液が廻るかのような運気の流れを感じる。カーテンは軽く揺れ、日差しも鮮明に部屋を照らす。コーヒーを飲む。記事を作成する。床は、すでにルンバで綺麗になっている。こんなにシンプルな生活の中で、すごく高い満足度を得られる。高級車に高級腕時計。きらびやかなハイブランドを着込む女性。どれもかつて思い描いていた贅沢だったのだけれども、今は、コンパクトカーにアップルウォッチ、同じ趣味を持つ女性のなかに、「安心感」を得られる。コスパとかなんとかいうモノサシでは測れない、結局の幸福感というのは、実際に生活している中で、決して背伸びすることなく得られる対象に、存在するのだと思う。

こんな大らかな内容の記事を書けるのは、やはり昨日、魅力的な女性に声をかけ、そこからそれが起爆剤になるまではいかないけれど、いつもとは違う角度からの光を差し込んで見えた世界に、確かに存在していた価値観を見つけられたからなのかもしれない。ゼロに何をかけてもゼロ。この考え方をしていると、何か淀んだ世界の中に停滞し続けてしまう状態が長引いてしまったのであれば、そこを突破するためには、自分から勇気のいるアクションを加えていかなければならないのだろうと感じたのであった。

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