思考力

多様なるピース

人間の心理学的本能は、何か足りない部分を埋めたくなるものらしい。例えば、断捨離中に、クローゼットにスペースができたり、余分な棚などができてしまうと、そこにはテトリスでスキマが出てしまったような錯覚に陥り、そこに新たなモノを置くことで、大量の不用品が増えることになる。これは、断捨離やミニマリストの考え方によると最悪な考え方で、ますます部屋が散らかっていってしまう。

このように、自分でも断捨離をしなければならないという場面で、なかなか踏ん切りがつかないのは、実は、脳の遺伝的な偏りが多いという研究結果もあり、そのような整理整頓できない人を、一概に怠け者だというのは、かなり的外れな指摘となりうる。私は、何か世間で溢れている考え方に沿わない人を、スタンダードから外れた良くない人間だというふうに考えることは、とても嫌いことである。やはり、モノを処分できないということ1つとっても、向き不向きというものがあり、そのような観点から、片付けの不向きな人へ軽蔑の目を向けることは、とても無礼なことではないだろうか。

思い込みというのは、とても危険なことであり、一度身に付いてしまった固定概念や先入観や偏見というものの見方を、正確に世間のノーマルに乗せることは、とても難しい。そして、そもそもの話、何がノーマルか、何がアブノーマルかというのは、国籍や人種、個々の判断によって決まるわけであり、そこにだって、やはり一人一人の個々の考え方という問題があり、それを潰してしまうのであれば、それこそ個性の特性という貴重な性質を潰してしまうことになりかねない。単一化された自分のモノサシで考えないようにしなければならないのだ。

多角的に物事を視る。自分だけの考え方を、常に柔軟な状態にしておく。多様なる視点。私は、そのような意味での「優しさ」を、常日頃から心がけて生きていきたいと思っている。誰かにレッテルを貼るということは、固定化された自文化絶対主義に陥ってしまうのだから。常に、物事を相対的に視る姿勢が大切なことだと強く考えている。

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