思考力

0%の努力

 

トレンドに乗るというということは、その分野の流れを知り尽くし、そのパイオニアとしてそのブームを拡張できる人を「知る」ことが、一番手っ取り早い。ただ、どんなに先駆者として脚光を浴びていたとしても、注目が集まるということは、その注目がなくなるということも、同じくしてはらんでいる。分かりやすく言い換えれば、「始まりがあれば終わりがある」ということ。

例を挙げるとすれば、予備校講師が、予備校の授業を掛け持ちしながら、多くのテレビ番組に出演し、世間に持論を叩きつけていたことが、多くの人の心を掴んだ時期もあった。ただ、「今でしょ!」なんて言葉は、やはり下火になっていると思われる。テレビを観ていない私は、その講師がブームになっている頃も知らなければ、今や、廃れているのかも、正直なところ分からないが、今、彼がタイトルになったり、サムネイルになったりしているYouTube動画がないところからも、以前のような勢いは失ったのだと思う。

現在、飛ぶ鳥を落とす勢いで、「ひろゆき」氏の論破が大旋風を起こしているが、これも一過性のもので終わるのだろうか。「今でしょ!」の人と、ひろゆき氏の違いを、メディアの媒体という側面から考えてみると、なかなか「ひろゆきブーム」の息が長く続くことが予見できそうだ。前者の予備校講師の視聴者とのパイプラインは、テレビであったのに対し、ひろゆき氏の舞台は、YouTubeである。

前者のテレビ番組の再放送には、あまり価値がつかないが、ひろゆき氏の発言は、そのままの勢いを、SNSというガソリンが猛烈な拡散スピードと紐付き、仮に、今の段階で、彼の活動がストップしたとしても、彼の発言や思考法などは、そのまま勝手にグルグルと回り続けるのである。現に、彼の一時間程度のチャットの「切り抜き動画」などは、著作権などが絡むので、切り抜かれた、ひろゆき氏、本人にも、勝手にチャリンチャリンと、お金が入ってくる。そうなると、極度のめんどくさがり屋であり、出不精の彼からしてみれば、なんの努力もしない状態で、半永久的にお金が入ってくる仕組みになる。スゴイ仕組みだ。

こう考えると、すでに、平成のメディアと、令和のメディアの差が浮き彫りになってきていることが分かるし、素人が、何かの拍子にポッと出てきたとしても、そこに仕組み構築型の発信力に乗ったものなのであれば、「一発屋」と揶揄されても、さほど問題はなくなってくると言える。タピオカブームは、一過性であったとしても、タピオカブームのときに、自分の私生活を盛りに盛ったSNSを拡散して、インスタグラマーになっていたとすれば、それは非常に賢い戦略をとっていたとも言えるのである。

何が流行するのかを予見できる千里眼を持つことは困難ではあるが、そのブームが、いかなるベルトコンベアに乗って運ばれていくのかを考えるのは、ビジネスにおいては、とても大切なことだ。そして、今は、その流通経路を、個人が作り上げられる時代へ突入したのだ。これに乗らない手はない。かつては、自分に優れた才能があったとしても、大きな組織の中の縦社会で潰されていた芽も多くあった。ただ、今、そのような大きな組織が、コロナの力も加わって、崩壊の一途を辿っている。もはや、形勢は逆転し、組織に属するということそのものが、自分の身を壊すことに直結してしまう時代になった。

そんなことを書いている途中で、オンラインの講師の研修会があり、スマホの電源を落として参加していたのだが、LINE Worksというアプリを連絡ルーツとしている会社のオンライン研修だったので、スマホの電源を切るわけにもいかず、他の講師とは格がケタ違いの私の出番で、思いっきり相棒のiPhoneが鳴き声をあげ、私の模擬研修は台無しとなった。

タイミングが悪すぎる着信の相手先は、千葉の労働局であった。ボクシングで言えば、今は千葉でコテンパンに打ちのめされた会社に対して、私のリベンジのリングにいる最中。いわば、今の仕事の試合をしながら、過去の試合の仇討ちをしている計画を立てているときに、運悪くかかってきた電話だったのだ。普段、何のためにマナーモードにしているのかも分からない私のiPhoneは、このような大事な局面で泣き叫んだのであるから、かけてきた相手は、かなり罪深い。ただ、ブラック企業への報復カウンターパンチを喰らわせる助っ人からの電話であえうのだから、許してあげよう。いや、ウェルカムだ。

今、どんな企業であれ、コロナという未曾有の大惨事の中で喘ぎ苦しんでいる。そんな中で、私のような個人が雄叫びを上げたところで、企業に一蹴されることくらい分かっている。もっと言えば、労基まで動かしての報復を企て、その労基が重い重い腰をあげようとしているのだから、奴らのカウンターパンチを喰らう可能性だってある。ただ、それならそれで問題ない。向こうは、火の車で労基からのメスが入り、それに憤怒して、私に名誉毀損の損害賠償を求めてきたとしても、私には払える金も奪える物もない。

ひろゆき氏は、裁判に出廷しないことを貫き通して、何億だかの損害賠償を回避した。だったら、ブラック企業にメスを入れただけでもスゴイことだし、そんな輩たちが、私に攻撃を返してきたところで、こちらはカタツムリが甲羅の中にいるかの如く、隠れていれば良い。文句を言われ続けても、近いうちに消滅するような会社だ。アンモナイトになることもあるまい。それに、「いざとなったら生活保護」という選択肢を口癖にしている「ひろゆき」氏のアドバイスは、このようなところで応用すべきなのである。

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