思考力

最小蒸しルーム

ホワイトボード を背にして授業をする。それも、マンツーマンの指導。これは、私が東京で、4年3ヶ月勤め上げた塾と同じスタイルなのだが、昨日、同じスタイルの塾で授業をすることになっていた。もはや、高校生の学校用の授業など、原稿さえあれば、即興で授業できるし、その方が予期せぬアクシデントを、生徒と共に考えられるので、とてもスリリングな授業形態となる。集団授業で、全員が爆笑するのも嬉しいが、やはり私は漫才師ではないので、目の前にいる受講生が、勉強に対して開眼することに喜びを見出したいと思っている。

本契約を結び、とうとう東京の塾で勤務をすることになったのだが、やはり、物件が決まらず、なかなか難航しているし、授業後に終電がなくなってしまうので、どんなに頑張っても、一夜を明かす場所に宿泊することになる。最近では、カプセルホテルを利用しているのだが、なかなか勝手が違うところもあったり、上にも両隣にも他人が眠っているとなると、とても寝心地が悪いものだ。そうなってくると、睡眠薬を飲んでいても、どうしても眠りが浅くなってしまう。これは、仕方がないことなのだが、やはり今、東京から自宅の最寄り駅まで、電車で爆睡してユラユラ とした足取りで帰ってくると、無意識のうちに、強いストレスがかかっているのがわかる。

昨日は、最悪の一夜を過ごした。サウナとシャワーがあるのだが、湯船がないカプセルホテルなのだが、私にとって、そんなことは問題ではない。とにかく私は、汗を流して皮脂の汚れを取りたいだけ。一番の目的は、眠ることだ。ところがどっこい、カプセルの中が蒸し暑くて眠れない。おそらく、体を冷やさないようにしてほしいという店側の配慮なのかもしれないが、とにかく暑い。とにかく暑いのであれば、とにかく眠ってしまえば良いと思ったのだが、私を簡単に夢の世界へと誘えるほど、私の神経は図太くない。

3時間程度、眠りつつ、目を覚ますとカプセルの中が蒸し返っている。このまま朝を迎えるのは不可能だと思い、フロントに行って、事情を話す。スタッフが、私のカプセルを確認しに行っている間に、持ち込みをしたチョコレートを食べようとしたら、ムニュムニュに溶けかかっていた。やはり、チョコレート温度計も、私と同じ不快感を示している。帰ってきたスタッフは、やはり私の寝ているカプセルの不良を認め、違うカプセルを用意してくれたので、そこで眠ることにした。薬が回っている状態なので、呂律が回っておらず、さぞかしおかしな言動を取っていたと思う。

目が覚めれば、朝の陽が上がっていると思うと同時に、雨の音が強い。ニュースでは聞いていたが、やはり警報級の雨が降るということで、こちらの方が今は気がかりだ。人間というのは、わがままなもので、一難去ってまた一難と言いつつ、結局のところ、一番新しい「一難」に警戒心を向ける。それは当然と言えば当然だけれども、去った「一難」に対して、定期的に自分なりのシナリオを用意できるくらいの気構えは欲しいものだ。そうしなければ、いつも同じ状況を打破できぬと躍起になったり、憤怒することにもなりかねない。苦手分野を潰していくというのは、勉強であれ、人生のハードルを超えることであれ、同じくらい大切なのだと思う。

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