思考力

文章にバックミラーは付いているのか

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最近は、ブックカフェで作業することが多く、英語やビジネスの書籍コーナーでは「速読」というタイトルを必ず目にする。目にするだけならいいのだが、かつて勤務していた塾では、授業時間に必ずタブレットのようなデバイスを使用し、ピンボールのような物体の動きを眼で追って、速読力を鍛える為の眼の筋肉の養成をしていた。

開いた口が塞がらない。しかも、生徒は愚直にそのメソッドを信じ込んで、毎回の貴重な授業時間の10分程度を眼の筋肉訓練に費やすのだ。何処ぞの組織のスパイを養成しようとでも言いたいのだろうか。今頃、その塾の生徒たちの眼の筋肉は、ゴリゴリのマッチョになってコンテントに出るのか、海外の俳優ばりに眼の色が変わっているのか、インスタで眼を大きく加工する必要もないくらいの「眼力全開」なのだろうか。私の尊敬するイケハヤ大学のイケハヤさんなら、眼力全開で揶揄なさるに違いない。あの方の辛口コメントは容赦ないことは事実だが、眼の筋肉のを鍛えて速読力がアップすることはありません。あくまでも私の見解です。逆に、科学的なデータがあるならご連絡ください。待ってます。

pastedGraphic_1.png眼の筋肉のストレッチ中

さて、前置きが非常に長くなったが、私なりに考える速読力をアップさせる為に必要なことを紹介したい。それは、ズバリ【知識の幅】を広げておくことだ。英文法の知識だとか単語力アップだとかいう知識の幅ではなく、予めストックしている知識の幅が広ければ広いほど、読んでいる文章を読み解く速度は、必然的にアップする。これは、外国語に限らず、自国語であっても同じことで、テーマとなる内容の知識が乏しい状態で内容を理解することは時間がかかるのは当然で、知らない単語の意味を調べている時間や、不明な内容をインターネットで検索している時間は「遅読」にしかならない。

ドイツの心理学者が、膨大なデータを基にして「床面積は収入に比例する」という素晴らしい結論を下した。私は、これを読解スピードに当てはめて考え、「知識の幅は読解スピードに比例する」と換言したい。予め、これから理解しようとしている分野の知識があるのならば、圧倒的に速読力に直結する。医者が最新の医療文献を理解するスピードと、私の文系脳で読解するカメにさえならない速度とを比較すれば明らかであろう。では、そのような知識の幅を広げる為に必要なことを考えてみよう。

まず、大きな知識の区分を識別することから始める。簡単な例で言えば、主要5科目それぞれの境界線を決め、副教科として、工作・美術・家庭科・体育・道徳などの境界線も大きく区切っていく。片付けで言えば、テレビのリモコンの場所を考えるのではなく、テレビという大きな箱を移動させて床面積を確保するという状態にする。脳の機能処理で言えば、大きな情報を処理した後に小さな情報を処理することで、脳の処理空間が明確になり、速度が格段にアップする。

pastedGraphic_2.pngRetoroなエンジンこそ強い

この作業を継続していくことで、小さな達成感を味わうことができる。そして、大きく区分をした知識領域を分析したら、必ず、他の領域との共通性と相違性を考えていく。たとえば、世界史の文章を読んだのであれば、その時代の経済の動きや文化はもちろん、当時の製造技術の発達具合、その技術から生み出された芸術作品、その芸術作品がどのように受け入れられ、そこからどれほどの科学的発展や肉体的発展とつながるのかなどなど、考えを拡げることはいくらでも可能。詰まるところ、興味と関心を保ちながら、知識の幅をどんどん広げていけば、読むスピードアップに直結するということも納得できるのではないだろうか。

1つの有益な情報を確実に得られた文章であれば大チャンスだ。その文章の枝葉をどんどん拡大させ、未知なる文章の背景にたいして既知の知識が有れば必ず読む速度は上がる。真の速読は、このような「知識の整理と知識のフットワーク」から鍛えられるのだ。

 

pastedGraphic_3.png知識背景の影を持っているか

確実なことといえば、眼の筋肉を鍛えるくらいなら、部屋の片付けをしながら床面積の広げ方を考えていた方がマシということである。

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